日本バングラデシュ協会 メール・マガジン90号(2021年9月号)巻頭言:『50 年間の成果を総括して、将来の持続的な発展を望む』理事 伊藤隆史

日本バングラデシュ協会    メール・マガジン90号(2021年9月号)

 

日本バングラデシュ協会の皆様へ

■目次

■1)巻頭言:『50 年間の成果を総括して、将来の持続的な発展を望む』

理事 伊藤隆史

■2)会員寄稿:『地下水ヒ素汚染問題の抜本的解決の糸口《社会開発の歪みとして生じたヒ素問題》』

-NGO/NPO シリーズ(本号よりスタート。原則3ヶ月毎に掲載の予定)-

特定非営利活動法人アジア砒素ネットワーク 理事
会員 石山民子

■3)寄稿:『日本におけるタゴール紹介とその歴史』

青山学院大学文学研究科 日本文学・日本語専攻博士後期課程
新田杏奈

■4)理事寄稿:『中西嘉宏「ロヒンギャ危機―『民族浄化』の真相」(中公新書 2021)の書評』

聖心女子大学教授
副会長 大橋正明

■5)理事連載:『バングラデシュの独立に寄り添う(1971 年 9 月):
国際社会の駆引きに揺れる東パキスタン問題』

-バングラデシュ独立・国交 50 周年記念シリーズ No.15-

理事 太田清和

■6)イベント、講演会の案内

■7)『事務連絡』


 

■1)巻頭言:『50 年間の成果を総括して、将来の持続的な発展を望む』

理事 伊藤隆史

 

まえがき
50 年間の時間的経過をそのままに振り返り、「50 年前のバングラデシュ」をドキュメンタリーとして伝える「メルマガ 8 月特集号」は、1971 年 8 月の様子を鮮明に伝えています。筆者は、その 15 年後の 1986 年から 2008 年の期間の内、約10 年間をバングラデシュに滞在し、多くの友人から 1971 年のことを聞きました。それら全ての情報が、国内にいたバングラデシュ人が、国内から見ていた独立の戦いの様子でした。特集号に書かれた多くの情報は、外国人が見た独立戦争の様子やそれに対応する国際情勢です。この両面からの情報をつなぎ合わせるとパズルを組み合わせた感覚で、情報が筆者の中で立体的に投影されます。

1.過去 50 年間のバングラデシュ
50 年前の 1971 年 8 月当時、ムジブル・ラーマン・アワミ連盟党首(独立後に首相)は、「国家反逆罪」で秘密特別軍事法廷が行われていました。(8 月 11 日開廷)。正に独立戦争勃発前夜 3 月 25 日に西パキスタン軍に逮捕され、西パキスタンに連行された後、行方が分かりませんでしたが、西パキスタン軍により軍事法廷の開始が発表されました。
たびたび逮捕されたムジブルは「連中は私を殺すだろう。でも私は気にしない。私の死後に民衆は解放されるだろう。」と言っていたとのことです。1971 年の悲惨な戦争で 12 月についに独立を果たしました。
独立後、ムジブルが暗殺され ジアウル、エルシャドの軍事政権時代を経て 1990 年代に民政移管を果たしました。筆者が滞在していた時も「外出禁止令」、「戒厳令」等があり、騒乱は感じていましたが、詳細は認識していませんでした。流動の時に滞在していた経験が、メルマガ特集号の歴史的証拠資料により個人的に再認識をした次第です。

2. 独立 70 年後(2041 年)のバングラデシュ
今後バングラデシュは Least Developed Countries (LDC)の卒業を確定して、その先に先進 20 ケ国入りを達成できるかです。国連開発計画委員会 (CDP) により 2018 年 3 月に LDC 卒業の条件を達成したとの発表がなされ、その後各種の確定の為のパラメータの調査、認定などが行われた上で最速 2024 年に国連による確定宣言がなされるようです。
又、バングラデシュ政府発表のターゲットとして 2041 年„独立 70 周年時‟迄に先進国入りを果たしたいと考えているようです。楽観的に観測をするならば、強い指導者がいて、個人のみの利益を追及する傾向から脱却して、独立戦争当時の困難を克服した時の辛い時のことを考え、努力すれば、十分に可能と言えるでしょう。現在、バングラデシュの国内総生産は 3,025 億 USD で世界 42 位です。(エレミニスト掲載の 2020 年値 https://eleminist.com/article/1108)
現在、これの倍を創出しても 20 位以内に到達しません。他国も年々発展しますので、20 ケ国以内の GDP に到達するには、ハードルは高いようです。同時に他国に援助してもらうのではなく先進国には先進国としての相応の義務も発生してきますので中心国と先進国との差は思ったより大きいもののようです。

3.独立 100 年後(2071 年)のバングラデシュ: 人口ボーナスが導く世界
バングラデシュには、人的資源は充分にあります。それらの人たちを有用に育てて有効活用できるような積極果敢な教育を確立、徹底し、底辺層を底上げすることが必須です。
バングラデシュは独立時期が、ASEAN 諸国の独立(1945 年~1960 年独立)より遅れたことにより、現在においては、人口ボーナス期の享受が優位になっています。経済の長期予測をする際に人口ボーナス期の移行の予測により、生産に寄与する年齢構成が総人口に占める割合で示されます。老年齢化指数の数値も、将来を予測するものとして経済を論じ
る方面の方には重要なファクターとして使われているようです。
年齢構成を考える場合、(1)15 歳未満、(2)15 歳以上 65 歳未満、(3)65 歳以上(4)総人口、の 4 つになります。(2)を生産年齢と言って総人口との比率が上昇時期は、「人口ボーナス期間」というようです。その期間は、産業が拡大してもそれに応じた労働力が賄え、産業が拡大することに貢献、支えることになります。「人口ボーナス期」の定義はいろいろあるもののバングラデシュでは、この「人口ボーナス期」が先進国入りを見込んでいる建国 70 周年時にその頂点になりそうで、大躍進するチャンスかもしれません。
(ジェトロ・エリア・レポート 2015 年 3 月号:
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001938/07001938.pdf ) つまり独立 70 年後から 100 年後が、天から与えられたチャレンジの成果が顕れる期間だと思います。
日本は、高度成長期からバブルがはじけるまで、この人口ボーナスを享受し日本人の勤勉さ、努力によってジャパン・アズ・ナンバーワンと言わしめるまでに発展しました。現在では老年人口指数 (上述の(3)と(2)の比率) が先進国でも特に高く、今後は如何にサステーナブルな状態を維持するか、発展の縮小を如何に減らすかです。
少子高齢化が進む日本と、バングラデシュとではかなり状況が違います。

まとめ
バングラデシュは、このような人口構成に恵まれているだけに、これを背景にして今後の国づくりをしていけば、バングラデシュには更に発展していく夢があります。バングラデシュ国民が如何に国を愛するか、個人の利益よりまず国の発展を考え努力し、将来のことを考えていくかで、繁栄ある将来があると思います。バングラデシュの一端の仕事をしてきた者として切に望みます

 

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