日本バングラデシュ協会 メール・マガジン(第16号)  2015年11月16日

日本バングラデシュ協会に参加の皆様へ

日本バングラデシュ協会 メール・マガジン(第16号)  2015年11月16日

「邦人殺害事件に伴う危険情報レベル引上げについて」 会長:堀口松城

前号のメルマガでもお伝えしたように、10月3日、バングラデシュ北部のロングプ
ル近くで農業プロジェクトに従事していた日本人星邦男さんが殺害され、ISを名
乗る組織によって犯行声明が出されました。この事態に対し、日本政府は「海外
安全情報」の「危険情報」を、レベル1の「十分注意」からレベル2の「不要不急
の渡航中止」に引き上げました。同決定に当たって必要となる、日本人の「生命
・身体」に危害を及ぼす事案がある程度継続的に発生している場合に当たるかと
の判断を行う上で、これまでISを名乗る同組織が一連の声明において、イスラム
諸国における外国人に対するさらなる攻撃の可能性を示唆しており、今後も同様
の事案が発生する可能性が排除されないとの結論に至ったためであるとされてい
ます。
日本政府による以上の決定により、例えば、バングラデシュに現在留学している
学生が帰国を余儀なくされ、その結果この学生は再びバングラデシュに留学する
機会を再び得られないまま、バングラデシュを現地で学び一生をバングラデシュ
研究によって身を立てようとしていた計画をあきらめざるを得なくなる事態が予
想されます。また、これまで、バングラデシュ各地で同国の発展に貢献すべく様
々の分野で活躍してきたJICAの専門家やJOCVの若者たちの活動も、このまま状況
が改善しない場合、活動の制約が生じる可能性があります。仮に帰国ということ
になれば、彼らがこのままバングラデシュに滞在して同国の様々な分野における
発展に寄与した場合の現地への貢献、そして、専門家や青年たちが得られたであ
ろう達成感などの貴重な経験を含む機会費用はかなり大きいものになることが想
像されます。
また、数年の予定でバングラデシュに赴任した専門家の中には、日本における生
活をたたみ、家を売り、子供の転校手続きを取り、また、現地での生活のため、
数か月分の家賃の前払いを求められる場合や、交通手段が限られている地域で、
子供の通学など家族の生活のために自動車を購入せざる得ない場合など、赴任に
当たって銀行から多額の借金をし、2,3年の派遣予定期間の間に返済計画を立て
ていた人たちがおられると思いますが、彼らは突然の帰国で生活設計に大きな狂
いが生じてくるケースも予想されます。
さらに、民間企業においても、バングラデシュで数年がかりで手掛けてきた農業
プロジェクトがようやく軌道に乗り始めたものの、今回の危険情報の引き上げに
より、現地にいる日本人スタッフも移動しないよう勧告を受ける結果、収穫期や、
船積み時期に指導に当たるべき担当者が動けず、多額な損失をだしているケース
も現に起こっており、最近急速な発展を遂げつつある日本とバングラデシュとの
貿易、投資関係に少なからぬ影響が生じています。日バ両国間の急速な貿易、投
資など経済関係の発展は、多くの関係者の何年にも及ぶ苦労の上に実現されたも
のであるだけに、とくに個人ないし小企業の場合はこの中止に伴う損失の累積は
大きな負担になることが危惧されます。
もとより、日本政府はこれらの問題を十分予測しつつも、国民の生命・身体を守
るためのやむを得ざる苦渋の決断を行いつつ、一日も早い危険情報レベルの見直
しの検討を続けているものと思います。とくに星さんが殺害された5日前に、ダッ
カ市内でイタリア人が同じくISを名乗るグループに殺害された事件について、10
月26日バングラデシュ当局が行ったISとは無関係の容疑者4名を逮捕したとの発表
が行われましたが、さらに、星さんのケースについても、バングラデシュ当局か
ら、事件の真相についての徹底的解明とその報告の早急な発表が強く期待される
ところです。
上記のように、バングラデシュとの関係発展を願って長年にわたり営々と努力を
重ねてきた関係者が耐え忍ぶこれ以上の負担を少しでも和らげるためにも、日バ
関係の発展のために働こうとする若者や人々の努力を支援するためにも、関係当
局において、引き続き危険情報のレベル引上げに至った情勢の絶えざるレビュー
の上に、一日も早い解決を図っていただき、ようやく「包括的パートナーシップ
関係」の緒に就いたばかりの日本バングラデシュ友好関係が再び大きく発展して
いくことを切望する次第です。

■目次
1)日バ協会メルマガ16号会長メッセージ
『モメン大使ご夫妻に対する日バ協会主催送別会の開催』 会長:堀口松城
2)『在日半世紀の体験(国際交流と相互理解)』理事:七田 央
3)『バングラデシュの政治、経済関係の動きについて』
4)『日本語で読む世界のメディア』東京外国大学
5)『事務連絡』

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