日本バングラデシュ協会 メール・マガジン(52号)2018年11月14日

日本バングラデシュ協会の皆様へ

■目次
1)『日本バングラデシュ協会メルマガ第51号会長メッセージ
-バングラデシュ劇団「ショプノ・ドル」の東京公演-』   会長 堀口松城
2)『現地便り : 高知県の稲作レポート 』
株式会社ケンツー代表取締役会長 三谷健二
3)『バングラデッシュと私』(連載 第I部)
三井物産(株)社友 古家秀紀
4)『イベント・講演会のご案内』
5)『事務連絡』

■1)『日本バングラデシュ協会メルマガ第51号会長メッセージ
-バングラデシュ劇団「ショプノ・ドル」の東京公演-』   会長 堀口松城

1.去る11月3日、4日の両日、バングラデシュの劇団「ショプノ・ドル」が「フェステ
ィバル/トーキョウ」に招かれ、池袋の東京芸術劇場において代表作『30世紀』の公演
を行いました。
この「フェスティバル/トーキョウ」は、東京芸術劇場を始め池袋エリアの文化拠点
を中心に、舞台芸術の新たな可能性を追求する国際舞台芸術祭として2009年に誕生した
ものです。2014年からは国際交流基金などとの共催で始められた「アジアシリーズ」の
下で、毎年アジア地域から国を選び、その国の舞台芸術を中心とするプログラムを実施
してきており、これ迄の5年間で、韓国、ミャンマー、マレーシア、中国を取り上げて
きたそうです。主催者としては同プログラムの下で、その整合性の不在を認めたうえで、
国境ではなく新たな視座から世界を見渡す可能性を提示していくことを使命としている
由であり、このような見地から、本年は、タイ、カンボジアの劇団と、バングラデシュ
の「ショプノ・ドル」が招かれました。

2、ダッカを拠点とする劇団「ショプノ・ドル」は、2002年以来17年に亘り、広島平和
記念日に合わせて原爆の犠牲者を追悼すべく、代表作「30世紀」の上演を続けてきてい
ますが、この作品は、ベンガル人演出家のバドル・ショルカルが書いた戯曲をベースに、
ショプノ・ドルの劇団長兼演出家のジャヒド・リポン氏が脚色、演出したものであり、
広島、長崎の悲劇をもとに、核開発や、原爆投下に係わった者たちへの問いかけや、被
爆者の証言を軸に話しを展開しつつ、さらに1971年のバングラデシュ独立戦争やパレス
チナ、イラクなど中東諸国で現在起きている出来事を交えながら戯曲を脚色したものの
由です。
また、この「30世紀」は、役者の演技を通して物語を展開する一般的な演劇とは異な
り、主に「語り」と「歌」を交えたベンガル地方の伝統的な演劇手法を用いながら、小
道具、大道具などのない空間で、バングラデシュの伝統的な織物や、現代と情報を象徴
する新聞紙、俳優の身体を効果的に用いて舞台を作り上げており、シンプルながら鮮や
かでエネルギッシュな作品になっている由です。

3.広島、長崎への原爆投下については、私のダッカ勤務中も、8月6日になると、毎年
ダッカのどこかで、同原爆投下による犠牲者を悼み、その意味を考える集会が行われる
ことを知り驚いたことがあります。  ある時、その集会の場で、知り合いの男性が近
づいてきて、「当時日本は、既に降伏の意思を固め、その条件を米に打診していたのに、
米がその返事を留保したまま、原爆を二発も投下したことは不当である」旨述べていた
のを聞いて、公邸に帰って早速調べてみると、日本政府は1945年初めには、ポルトガル、
スイス、ソ連などを通じて、降伏の条件として天皇制の維持だけは認めて欲しいと米へ
の取次ぎを依頼していたことを初めて知り、その知人に感謝したことがありました。
一方、バングラデシュはインド、パキスタンの核保有国に挟まれ、1999年5月にはカ
ーギル紛争が発生し、核戦争の具体的脅威に晒された経験があったため、広島、長崎の
原爆投下は決して他人事ではないことが、同国民の核問題に対する強い関心の理由にな
っているのです。

4.翌11月5日、バングラデシュ大使館で、「ショプノドル」のジュアナ・ショブノム
劇団長夫人による独り芝居「ヘレン・ケラー」が上演され、招待されたので見てきまし
た。
この芝居は、ヘレン・ケラーの自伝をもとに、タゴールの東洋的思想が反映された戯
曲で、盲目のヘレン・ケラーがタゴールの白く長いひげを触りながら交流する動画のシ
ーンが背景に映されます。それは、タゴールが1930年、ニュー・ヨークのニュー・ヒス
トリー・ソサイアティーを訪問した時のもので、この時タゴールは、アメリカにおける
ヘレンの様な障碍者の問題と、インドにおける平和の問題を取り上げましたが、そのス
ピーチの記録が残っている由であり、その内容については、機会があれば、追って東京
外国語大学の奥田先生に報告して頂ければと思っています。


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