バングラデシュの政治体制は議院内閣制を柱としており、行政権は内閣総理大臣に与えられる。大統領は国家の元首および軍の最高司令官として定められており、総理大臣、大臣、および最高裁判所裁判官の任命権を有する。大統領は首相の助言にしたがって行動する象徴的な存在で、交戦権の行使には議会の承認が必要となる。

議会は5年任期の一院制で、小選挙区制度のもと選挙によって選ばれる300名および、選出された議員の割合に応じて各党に配分される女性留保議席50名の計350議席によって構成される。しかし、議会制のもとでの民主主義の歴史は浅く、1975年から1990年までは、大統領制の下で軍部出身の大統領に権限が集中し、国会での議論が形骸化した議会制度、もしくは直接の軍政下にあった。バングラデシュ政治の実質的な民主化は、1990年にH・M・エルシャド政権が学生運動を主体とした民主化運動によって倒された後の憲法改正によって、大統領を元首とする議院内閣制度が確立した1991年に始まったといえる。

1991年の民主化以降は、アワミ連盟(Awami League)とバングラデシュ民族主義党(Bangladesh Nationalist Party:以下BNP)の二大政党が交互に政権を担ってきた。現政権与党のアワミ連盟は、2018年12月30日に実施された第11次国民議会選挙において単独で 6 分 の 5 以上の議席を獲得した。アワミ連盟のシェイク・ハシナ総裁はバングラデシュ史上初となる3期連続での首相就任で、経済成長を柱とした政策を推し進めている。

主要野党BNPは、国民から一定の支持を得ているものの、カレダ・ジア総裁をはじめとする党のリーダーが拘束されており、党勢の巻き返しを図るのが難しい状況にある。

両党の間には、支持基盤や理念に違いはみられるものの、政策的には大きな差異はなく、むしろ総裁間の心情的確執や利権の争奪、権力への強い固執からくる泥仕合的な対立が目立っている。現段階では上記二大政党に割って入るだけの支持基盤と強いリーダーシップを持つ政党・政治家は存在しない。

(文責:日下部尚徳)